碁盤を囲んで

詩の碁の言いつつ、笑いを求め、碁友と遊ぶ日々。

木洩れ陽に 三路伸びたる 石の影

朝晩の囲碁教室のあいまに近隣の大学を訪れた。昨年発足した囲碁将棋愛好会は十数名で、週二回集う。幹事の三回生は、学園祭の囲碁将棋企画で活動を共にした。彼とは5子で打った。黒が力を出し、白は合棋道の心得で応じ、フリカワリに忙しい碁となった。もう一人は一回生、学園祭の折に一局打ったことを互いに憶えていた。そのとき彼は高3で、志望大学の下見がてら、立ち寄った。

 

隣で将棋を指していた二人も、検討を終え、駒を収めると、囲碁に加わった。ルールは知っており、9路5子から数局打った。打ち終えて、一人が印象深いことを口にした。「碁石って、どっち向いてるか、わからないですね」。将棋三段の彼は、実感の篭った一言で、囲碁の面白さと同時に本質を射た。その後、四限を終えてきた学生二人とも9路で。

 

一人が、西陽を察して風を入れようと、不透明ガラスの窓を開けた。陽光は、北壁に据えられたホワイトボードに反射し、盤上を照らした。厚いガラス石の影が次第に伸びていくのを追いながら、妙に懐かしい気持ちになっていった。その影こそは、私の碁の原風景と気づいた。

 

高校一年のとき、将棋を指そうと囲碁将棋同好会に入ったものの、顧問も含めて将棋を指すものはいなかった。やむなく囲碁を打つことになった。一年生は四人、二年生の姿はなく、2ヶ月後の6月に引退する三年生が一人、皆に星目で打ってくれた。しかし、盤上の目的が浮かばず、途方に暮れた。どうしようもなく、石の影を見ていた。一年生の終わりに一人やめ、三人が残った。

 

三年生のとき、その三人で引退試合と洒落こみ、都大会の団体戦に参加した。部にもなれない同好会チームが、全て2-1のスコアで三連勝し、Bクラス決勝に進んだ。三将が勝ち、副将は負け、私の碁が残った。私が地に走り白模様が広がり、敗勢となった。私は小刻みに時間を使いながら、白の側壁にキリを入れ、中央への踏み込みに賭けていた。会場の校舎にも西陽があたっていた。影を引く天元の白石にツケギリ。戦いが続き、あちこちでフリカワり、時計の叩き合いの末、作って半目だった。いつのまにか大勢のギャラリーを背負っていた。三将の彼が言った・・「伝説を作り損ねちゃったな・・」。

 

高校を卒業し、長らく碁を打たなかった。学生生活を終えて、盤石を買った。どうということはない桂の一寸盤と、厚さ10mmの松印硬質ガラス石。石は籐編みのカゴに入れていた。その後、「蓋があったほうがいい」と家人が言い、欅の碁笥を買った。盤と色味が調和し、馴染んでいる。

 

木洩れ陽に 三路伸びたる 石の影

 <影が呼び覚ます記憶 棋語:路、石>

 

「欅」の雑木林に囲まれた母校の同窓会名は「けやき会」、学園祭は「木もれ陽祭」と称する。